枕たたきの効用
怒りを外に向かってぶちまけることは、怒りの処方箋としては、
最高のものではありません。怒りをいったん外にむけてぶちまける
ということは、意識の深層で、わざわざ腹を立てる練習やリハーサルをして、
もっと強烈な怒りに育てあげるようなものです。
相手に怒りをぶつけてしまったら、双方ともにずいぶん傷ついてしまいます。
なかにはすぐに自分の部屋に駆け込んで、ドアに鍵をかけて、
枕を叩いて怒りを解消する人もいます。
これを称して「怒りの解消法」といいます。
しかし、これでは、まったく怒りと触れ合うことにはなりません。
枕に触れたことにさえなりません。もしあなたが本当に枕と触れ合っていたら、
枕は何をするためのものかわかるので、叩いたりしないはずです。
そうはいっても、この方法は一時的には効果があるかもしれません。
枕を思いっきり叩いたら、体力を消耗して疲れてしまい、
少しは気分が晴れるかもしれません。
しかし、怒りの根はいまだ手つかずのままなので、
その後、部屋から出て、おいしい食事でもとれば、また元気を取り戻します。
怒りの種に水をやれば、また芽をふいて、もう一度枕を叩かなければ
気がすまなくなります。
枕たたきはちょっとした息抜きにはなりますが、決して長つづきするもの
ではありません。
本当に怒りを変容させるには、怒りの根を掘り起こさなければなりません。
怒りの原因を深く見つめてください。
そうしないかぎり、怒りはまた芽ばえてきます。
日々気づきの練習をしながら、新しい健全な種を播いてゆけば、
気づきは怒りを見守り、自然に別の感情に変えてくれます。
『微笑みを生きる―「気づき」の瞑想と実践』
ティクナットハン著
池田 久代 訳
ネガティブな感情が起こったとき、起こってないフリをしたり、
なにか別の感情に強引に変えようとしたりすると、
いつの日かその感情に復讐されます。
ポジティブな感情しか持たないようにしていると、
カラダのどこかが不調になったり、
家族の誰かがネガティブになって、
バランスを保とうとします。
怒りの感情が起こったとき、まずは怒りの感情を
よく見つめてみます。観察します。
すると、いつの間にか、怒りは穏やかになって、
静まっています。
怒りを表すのは、それからでも遅くありません。
怒りを感じて、すぐに表現すると、怒りに全身を包まれて
飲み込まれてしまいます。
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